『科学は、人間が編み出した方法論の一つに過ぎない。』
昨日の廃炉の話から
執行草舟氏の「生くる」(講談社)、「根源へ」(講談社)を再読。
21世紀に入って、科学への考え方は大きく変わって来た。
一つは、福島第一原発事故。
もう一つは「Opera実験」で、
素粒子ニュートリノが高速より速かったという実験結果。
アインシュタインの相対性理論を覆す結果で、
現代物理学の根底を揺るがす可能性があるというもの。
実験結果云々というより、2011年9月24日付の新聞報道があったということに意味があるという。
氏によれば、
『20世紀初頭は「科学の世紀」を築くためには、
科学が神に近づかなければならなかった・・・
つまり、近代を創り上げて来た原動力であった科学が、
その頂点に近づきつつあった。・・・』(「根源へ」p.49)
その上で、
『・・・現在は相対性理論を否定したい人が支配的になりつつある時代なのです。科学とは、実は時代精神を応援するものであり、真実とはまた違うものなのです。』(「根源へ」p.49)
ここで言う「相対性理論を否定したい人」とは、
『原子力とは、四百年に及ぶ西洋科学の発展の頂点に位置するもの…その安全性は「科学」による「神話」によって「保障」されているのです。』とも述べられていることから、
科学の頂点である「原子力問題」が人類悪として浮上した一方で、
『一方的に否定し去る風潮はまだまだ権威筋が許』さない。(「根源へ」p.51)
これは、2017年の今でもまだそうだし、しばらくは続くだろう。
また、
『現代の科学は、中世における宗教の代替品であることを根底に置いてかなければなりません。現代の科学は、実は宗教と等しい。…フランスのパスツールが面白いことを言っています。「実験とは、それを行う人間の思い通りの結果が来るのだ」と。つまり、実験結果は個人の意志と時代精神に支配されているのです。もちろん、それが悪いことだと言っているのではありません。科学とは、そういうものだと知る必要があると言っているのです。そして、人間生活のために善用していくものが科学なのです。』(「根源へ」p.49)とあり、
『合法的武器』である「科学」という権威は、とどまるところに戻るだろう。
あくまで、
- 『科学は、人間が編み出した方法論の一つに過ぎない。』(「生くる」56)のだから、
- 一つの方法論に戻ることは時代の流れだ。
科学の善用の仕方については、「生くる」59〜61に記されている。
ここでは、古代ギリシャの医学者・ヒポクラテスの言葉をあげる。
『…医者としての一番の資質は何かと問われたとき、
治すべき病気、治してはならない病気、治らない病気を見分ける目を養うことだ…』(「根源へ」p.63)と答えている。
畳の上では死ねない現代医学についても示唆深い。
科学においては、
原子力という手を付けてはいけない領域に手を付けてしまったことを意味していると考える。
『現代は、科学は正義であり、神に近い扱いを受けていますが、それが少しずつ変化しつつある。』(「根源へ」p.64)のもまた間違いない。
では、宗教、科学の次に何が拠り所になるか?
氏は、『怖いところ』(「根源へ」p.64)があると言っています。
時代の変化はもう免れない。
しかし、その受け皿となるものができなければ、今の体制は続けざるを得ないだろう。
とはいえ、AI(人工知能)の登場は変化を加速させるに違いない。
AIも馬鹿ではないので、人間との対立をのぞまないが、
人間が続けてきた「戦争」に代表される「道徳」の部分を、
AIが人間に教える時も不可避と考える。
はたして、人間自身の力でどこまでできるか?
実は、テクノロジーの進展は人間そのものの在り方を問われている。
国家同士の安全保障(人間対人間)以上に、
AI時代に人間が生き残るため(人間対AI)にはどう在るべきか?
これが問われている。
その意味では、
全世界人口70億人で「1」と見て、
一人(部分)がその「1」(全体)に影響を与える
ポピュレーションセオリーの時代が到来している。
その前提は、真の意味での命の価値と横の関係の理解が欠かせない。