「仲間意識」
リアルインサイト2017年11月号
氏のお話をオンラインでお聴きした。
自由民主主義の背景には、仲間意識が必要だという。
それが今なくなっている。
理由は単純だ。
リベラル派が標榜する国籍をなくす議論は大きくグローバリゼーションの流れになる。
多国籍企業が台頭する中、
安い労働力を求めて後進国へ投資して、労働単価が上がったら別の土地に行く。
また、法人税がより安いところを求めて、本拠地を移す。
タックスヘブンが生まれた元だ。
それらは、人の顔が見えない人々だから、搾取してもいいという理屈になる。
また、古代ローマの奴隷制・十字軍の略奪・植民地支配・現代のグローバリゼーションの美名のもとの多国籍企業による搾取、形は変われど大きく変わっていない。
奴隷を作る動きと構造的には変わらない。
それはそうだ。
仲間意識のある人から搾取しようとしない。
金を貪り取ろうなんて思わない。
そうだ!
自分達さえ豊かなら、他人が貧しかろうが関係ないという発想だと言える。
利己主義の一つと言っていい。
変な理屈をつけて行ってきた野蛮な勢力には知れば知るほど頭にくる。
日本人にはない発想だ。
ともあれ、
当たり前と思って来た今までの動きに反旗をひるがえす内容だった。
今後の話として、
世界中でグローバル疲れしているという。
日本の精神的破綻は、もろに影響を受けている。
自殺者の増加や凶悪犯罪、引きこもりやうつ、過労死、今までの日本人が経験しなかった変化だからだ。
本来、第2次世界大戦後、ブレトンウッズ体制のもと、資本の国際的移動に一定の歯止めをかけて国民の自己決定権(国民主権)を保障して来た。
いつの間にかこれがなくなったしまったが、おそらくバブル前後から変化した(と私は思う)。
いわゆるプラザ合意とその前に行われた金本位制の廃止に連なる部分だ。
今は世界に流通する通貨の80%は金の裏打ちのないものだという方もいる。
英語化の流れから説明頂いたが、そもそも植民地支配の時は、母国語は使えなかった。
今は日本語を使えるけど、いわゆる「いい」会社では社内公用語を母国語以外にしようという情けない状況でもある。
明治維新以後、日本語を守った先人の思いは、
日本語で専門教育含めた議論ができれば多くの人の理解を得やすいからだった。
もし、欧米以外のような、専門教育を母国語以外で行う環境になったら、今のような水準を保てなかっただろう。いわゆる民度も高まらなかったはずだ。
そのため、明治にはたくさんの言葉を日本語に変換する作業に追われたという。
先人の偉業にもまた頭が下がる。
ルーマニアでフランス?で生きたエミール・シオランの
「祖国とは国語である」(Ume patrie, c’est une langue.)との言葉も感慨深い。
母国語を使いたくても使えない環境下で生きざるを得なかったシオランにも想いをはせる。
改めて本題に戻る。
見ず知らずの他人に仲間意識を持てるだろうか?
この前の選挙で流行ったような「排除」はしないだろうか?
残念ながら、そこまで善人はいない。
けど、もし顔が見える関係を持てたら、少しでも仲間意識を持てるはずだ。
枠組みが大きくなりすぎた。
知ってる人なら、騙さないし、排除はしない。
仲間意識もその延長上にある。そのくらいのコミュニティの上に成り立つものにしたらいいのだ。
公共(オホヤケの代)には限界が見える(と私は思う)。
その先は、家や族といった「ウカラ・ヤカラの代」になると言う方もいて、なんだかその兆しを感じるお話だった。
つまり、顔が見える関係性の中で生きる時代になる。
コミュニティが大切な時代にもなる。
さらに、それって一周回って、昔に戻ることでもある。
その点で東北の時代になることともつながる。
歴史の見直しが進む。
青森の三内丸山遺跡では数千人規模の集落があったこともわかってきた。
日本人のルーツを遺伝子情報で辿ると、近隣アジアと随分異なることがわかってきた。
「千葉時代」を入れるべきと言った論も出た。
中世の見方は大きく変わっている。
戦国時代のイエズス会の侵入についても随分解明されてきた。
真珠湾奇襲も戦争したいルーズベルトが仕掛けたとフーバー元大統領が手記に残した。
歴史の見方が変わると時代が変化するのは明治維新を見れば明らかだ。
徳川幕府が武士の支配が当たり前の時代に、水戸光圀の大日本史は征夷大将軍の徳川の記述を天皇陛下の記述よりすべて一段下げて書かれた。そのことで、天皇は徳川より上の存在だと暗に示したものだった。
また、錦の御旗を見たことない人々が太平記を知っていたから、戦中にとある側を見て「錦の御旗だ!」と声があがり、敵陣は戦意を喪失した話もまた後押しした。
歴史が流行ったからこそ、明治維新が生まれたとも言える。
明治以上の大きな変化が待っているように感じる。
氏の言う「仲間意識」は、
今まで当たり前だった奴隷制度の延長戦でしかなかった流れを
今断ち切って、新時代を切り開くキーワードかも知れない。